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医療機器の売却で「買取できない」ケースとは?失敗しないための法律知識と注意点
更新日:2025年08月05日
「周辺に競合のクリニックが増えてきたので、これ以上運営を続けていくのはもう限界」「跡継ぎもいないことだし、年齢的にもそろそろ潮時かな」…閉院に踏み切る理由はさまざま。しかし、いざ、閉院しようとなると、思った以上に費用がかかって驚かれる医師やオーナーは多いのではないでしょうか。
閉院には数百万から1,000万円以上の費用がかかることもあり、保有資産である医療機器をいかに適正な価格で、かつ法律に則った方法で売却できるかが、院長や経営者にとって重大な関心事であることは間違いありません。
ところが、業者に買取を依頼したら「この機器は買取できません」と断られてしまうと、それまで閉院のために着々と進めてきた準備も水の泡です。予算が足りなくて閉院できないなんてことになったら、目も当てられません。
そんな最悪の事態にならないよう、医療機器売却の前に法律的な基礎知識をしっかり踏まえておきましょう。中古医療機器が売れるケースと売れないケースはどう違うのか、その根本的な理由を専門家の視点から徹底的に解説します。
医療機器売却の前に知っておきたい基礎知識と法律のポイント
医療機器の売却を成功させるための第一歩は、医療機器とは何かを知ることです。日本では「薬機法(旧薬事法)」(正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等規定)によって、医療機器とは「人や動物の病気の診断、治療、予防、または身体の構造や機能に影響を与えることを目的とする機械器具等のこと」と定義されています。
もちろん、お医者様ならご存じでしょうが、医療機器の売買や取引についても、この薬機法によって厳しい規定が定められているのです。まずは、その薬機法について再確認しておきましょう。
医療機器の定義と主な種類
薬機法の第2条第4項において、医療機器は「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であって、政令で定めるもの」と定義されています。
この定義に基づき、医療機器は人体へのリスクの度合いに応じて、大きく3つのカテゴリーと4つのクラスに分類されています。
さらに、これらの分類とは別に、保守点検や修理等の管理に専門的な知識・技能が必要とされる医療機器として「特定保守管理医療機器」が指定されています。これにはX線撮影装置、CT装置、MRI、人工心肺装置などが該当し、クラス分類に関わらず、最も厳格な規制が適用されます。
これらの分類と販売・貸与業に対する規制の関係をまとめたのが以下の表です。ご自身の売却したい機器がどこに該当するのかを把握することが、最初のステップとなります。
表1:医療機器のクラス分類と販売・貸与業の規制
カテゴリー分類 | クラス分類 | 人体へのリスク | 具体例 | 販売・貸与業の規制 |
---|---|---|---|---|
一般医療機器 | クラスI | 極めて低い | 聴診器、メス、X線フィルム、救急絆創膏 | 手続き不要(※) |
管理医療機器 | クラスII | 比較的低い | MRI、電子内視鏡、心電計、補聴器 | 営業所ごとの届出が必要(※) |
高度管理医療機器 | クラスIII | 比較的高い | 人工呼吸器、透析装置、コンタクトレンズ | 営業所ごとの許可が必要 |
クラスIV | 生命の危険に直結 | ペースメーカー、人工心臓弁、冠動脈ステント | 営業所ごとの許可が必要 |
※ただし、クラスI、IIであっても「特定保守管理医療機器」に該当する場合は、営業所ごとの許可が必要です。
廃棄処分か、売買・譲渡かで、関わる法律も異なる
不要になった医療機器の行く末は、「売却・譲渡」か「廃棄処分」か、おそらくこの二択となるでしょう。同じ医療機器でも、実はこの選択によって適用される法律が根本的に異なります。
1. 売却・譲渡の場合:薬機法と古物営業法
中古医療機器を売買・譲渡する際には、前述の「薬機法」が適用されます。特に、高度管理医療機器や特定保守管理医療機器を取り扱う買取業者は、都道府県知事から「高度管理医療機器等販売業・貸与業」の許可を得ている必要があります。
また、中古品をビジネスとして取り扱うため、公安委員会からの「古物営業法」に基づく古物商許可も必須です。これらの許可なく取引を行うことは違法行為となります。
2. 廃棄処分の場合:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)
売却できずに廃棄する医療機器は「産業廃棄物」として扱われ、「廃棄物処理法」の規制対象となります。医療機関は「排出事業者」として、その廃棄物が最終的に適正処理されるまで責任を負います(排出事業者責任)。
特に注意が必要なのは、血液や体液、病原体が付着した「感染性医療機器」です。これらは「特別管理産業廃棄物」に分類され、通常の産業廃棄物よりもさらに厳格な基準で処理しなければなりません。処理を委託する際は、特別管理産業廃棄物処理業の許可を持つ専門業者と書面で契約し、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を発行・管理する義務があります。
万が一、無許可業者に処理を委託したり、不法投棄に関与したりした場合の罰則も定められています。個人の場合は5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、法人の場合は3億円以下の罰金が科される可能性があります。
家庭用医療機器と中古医療機器の取引の違い
ここで、一般の消費者が使用する「家庭用医療機器」と、医療機関で使用される「(業務用)中古医療機器」の取引の違いについても触れておきます。マッサージ器や家庭用電位治療器などが家庭用医療機器に該当しますが、これらも薬機法上の医療機器です。
家庭用であっても、管理医療機器に分類される製品(例:マッサージ器)を、許可や届出のない個人がフリマアプリなどで販売することは原則として違法です。取引には、少なくとも「管理医療機器販売業」の届出を行った事業者であることを要します。業務用の中古医療機器の取引は、さらに厳格な許可制度の下で行われなければなりません。
表2:業務用中古医療機器と家庭用医療機器の取引の違い
取引の関連項目 | 業務用中古医療機器 | 家庭用医療機器 |
---|---|---|
適用法令 | 薬機法、古物営業法、廃棄物処理法 | 薬機法、古物営業法、電気用品安全法など |
必要な許可 | 高度管理医療機器等販売業・貸与業許可、古物商許可など | 管理医療機器以上は販売業届出が必要 |
販売の可否 | 原則、許可・届出業者のみ売買可 | 個人によるフリマ・無許可出品は原則禁止 |
下取り | 許可・届出を持つ専門業者による手続きが必須 | 販売者が許可・届出を持っていれば可能 |
医療機器の買取ができない9つのケースとその理由
医療機器の売却がなぜ「できない」のか。その理由は、単に「古いから」「壊れているから」といった単純な理由とは限りません。法律、メーカーのポリシー、そして機器の状態という3つの側面から、買取が困難になる具体的な9つのケースに分けてご説明しましょう。
ケース1~3:法律の制約による売買不可品目
買取業者が最も遵守しなければならないのが法律です。たとえ高価な機器であっても、法的に取り扱いが禁止・制限されていれば、買取は不可能です。
ケース1: 買取業者が適切な販売許可を保有していない
例えば、買取業者が「管理医療機器販売業」の届出しかしていない場合、許可が必要な「高度管理医療機器」や「特定保守管理医療機器」(CT、MRIなど)を買い取ることは法律上できません。売却側は、依頼先の業者が売却したい機器の分類に対応した適切な許認可を保有しているか、事前に確認する必要があります。
ケース2: 薬機法等で販売が厳しく制限されている品目
一部の医療機器や関連品は、その性質上、中古市場での流通が極めて厳しく制限されています。以下がその例です。
- 処方薬、コンタクトレンズ、補聴器: これらは個人の身体に合わせて処方・調整されるものであり、安全性の観点から中古品の売買は想定されていません。
- 単回使用医療機器(シングルユース): 注射針やカテーテルなど、一度使用したら廃棄することが前提の機器は、感染リスクや性能劣化の問題から再販できません。
- 自己検査用グルコース測定器などの一部機器: 適切な知識なく使用されると健康被害のリスクがあるため、販売が厳しく管理されています。
ケース3: 衛生面・安全面で再販に適さない品目
法律で明確に禁止されていなくても、衛生面や安全性の観点から買取が事実上不可能な品目があります。
- 使用済みの衛生材料: ガーゼや包帯など、一度使用され血液や体液が付着したものは、感染性廃棄物として処理する必要があります。
- PSCマーク等のない特定製品: 圧力鍋やレーザーポインターなど、特定の安全基準を満たすことを示すマークがない製品は、法律(消費生活用製品安全法など)により買取対象外となることがあります。
ケース4~6:メーカーや販売元による再販禁止品や部品供給終了品
法律をクリアしていても、製造元であるメーカーの意向やサプライチェーンの問題で買取ができないケースも多々あります。
ケース4: メーカーがリコール(回収・修理)対象としている製品
製品に安全上の欠陥や不具合が発見され、メーカーがリコールを発表した場合、その製品は中古市場で流通させることはできません。
ケース5: メーカーの部品供給が終了し、修理・保守が不可能な製品
医療機器は定期的なメンテナンスや、故障時の修理が不可欠です。しかし、メーカーがそのモデルの製造を中止し、修理に必要な部品の供給を終了している場合、買取業者はその機器を買い取ることができません。
ケース6: メーカー所定の耐用期間を大幅に超過した製品
メーカーは、医療機器が安全に使用できる標準的な期間として「耐用期間」を設定しています。これは法的な減価償却のための「法定耐用年数」とは異なり、安全性を担保するための技術的な目安です。この耐用期間を大幅に超えた機器は、予期せぬ故障のリスクが高まるため、買取を敬遠される傾向にあります。
ケース7~9:著しい故障や動作不良のある医療機器
最後に、機器そのものの物理的な状態が原因で買取できないケースです。
ケース7: 電源が入らない、主要機能が完全に動作しない
電源が入らない、電源を入れても動作しない、、測定値が全く表示されない、画像が映らないなど、機器の根幹をなす機能が完全に停止している場合は、修理コストが買取価格を上回るため、価値がないと判断されることがほとんどです。
ケース8: 主要な付属品や専用ソフトウェアの欠損
医療機器は、本体だけでなく、専用のプローブ、ケーブル、ソフトウェア、キャリブレーションツールなどが揃って初めて機能を発揮します。これらの必須付属品が欠けていると、機器の価値は大幅に下落し、買取不可となることがあります。
ケース9: 物理的な損傷が激しく、安全性が確保できない
筐体に大きな亀裂や破損がある、液体をかぶって内部が腐食している、といった物理的な損傷が激しい場合、安全な使用が保証できないため買取は困難です。特に、電気的な安全性が損なわれている場合は、感電などのリスクがあり、再販は不可能です。
【重要】しかし、「故障=価値ゼロ」ではありません
ここまで買取できないケースを挙げてきましたが、「壊れているから即廃棄」と判断するのは早計です。
例えば、超音波診断装置の本体は故障していても、プローブ(探触子)や内部の基板には価値が残っている場合があります。専門知識を持つ買取業者であれば、機器全体としてではなく、価値のある「部品単位」での買取を提案できることがあります。
また、複数の医療機器をまとめて売却する場合、価値のある機器と合わせて、値段のつかない故障品を無料で引き取ってもらえる可能性もあります。
諦めて廃棄する前に、まずは部品単位での査定や、まとめ売りの相談を専門の買取業者に問い合わせてみましょう。意外に費用のかかる閉院の負担を多少なりとも軽くできるかもしれません。
中古医療機器を売却する際のチェックポイント
では、実際に中古医療機器を安全かつ有利に売却するためには、どのような点を心得ておけばよいのでしょうか。法令遵守を大前提とし、「メーカーへの通知義務」「機器の状態確認」「買取業者の選定」という3つの重要なチェックポイントを解説します。
忘れちゃいけない「メーカーへの通知義務」
案外、多くの医療機関が見落としがちなのですが、実は法的に定められたとても重要な手続きです。高度管理医療機器等の中古品を販売・譲渡・貸与する際には、薬機法施行規則第170条に基づき、事前にその機器の製造販売業者(メーカー)へ通知しなければならないと義務付けられています。
なぜなら、医療機器の製造メーカーには中古品として流通後も自社製機器の情報を把握し、品質・有効性・安全性の確保に必要な情報提供や指導を行う役割があるからです。例えば、後から安全に関する重要な情報が得られた場合や、リコールが発生した場合に、メーカーが新しい所有者を追跡し、適切な対応を行う必要があります。
この通知を怠ると、新しい所有者がメーカーからの正規の保守点検や修理サポートを受けられなくなるなどの可能性があります。信頼できる買取業者なら、必ずこの通知プロセスを熟知していて、適切に代行してくれます。買取業者が正しいコンプライアンス意識を持っているかどうかを確かめるためにも、を選定する際に、「メーカーへの通知は行っていますか?」と質問することは、その業者のコンプライアンス意識を測る良い指標となります。
売却したい中古医療機器の状態と動作確認
査定を依頼する前に、買取価格を左右する機器そのものの状態を入念にチェックしましょう。以下の項目を確認し、情報を整理しておくことで、スムーズで公正な査定が期待できます。
買取業者の許認可は必須条件
最後に、忘れずに行いたい重要なチェックが、取引相手となる買取業者は法律に基づいた適切な許認可を保有しているかを確認することです。無許可業者との取引は、違法行為に加担することになり、売却した機器が不正に流通するリスクや、代金未払いなどのトラブルに巻き込まれる危険性があります。
以下のチェックリストを参考に、業者のウェブサイトを確認したり、直接問い合わせたりして、許認可の有無を必ず検証してください。正規の業者なら、ためらわずに許認可番号を提示します。
表3:中古医療機器買取業者の必須許認可チェックリスト
上記の許認可情報は、通常、事業者のウェブサイトの会社概要ページなどに記載されています。記載がない場合や、提示を渋るような業者との取引は絶対に避けるべきです。
中古医療機器の買取なら正規販売業者のグリーンメディカルにお任せください
ここまで解説してきたように、中古医療機器の売却は、複雑な法律と専門的な知識が求められる手続きです。コンプライアンスの遵守はもちろん、資産価値が正しく評価され、安全に取引を完了するためには、信頼できるパートナー選びが不可欠です。
株式会社グリーンメディカルは、中古医療機器の売買に必要な全ての許認可を取得した正規の専門業者です。
弊社はこれらの許認可に基づき、薬機法をはじめとする関連法規を徹底的に遵守した上で、全国の医療機関様から医療機器の買取を行っています。経験豊富な専門スタッフが、法律で定められたメーカーへの通知義務の代行から、適正な査定、安全な搬出まで、責任を持ってワンストップで対応いたします。
「これは買取できないだろう」と諦めている故障品や古いモデルでも、部品単位での価値を見出すことで、買取価格を提示できる可能性があります。まずはお手元の医療機器について、お気軽にご相談ください。専門家による確かな目で、皆様の大切な資産の価値を最大限に引き出すお手伝いをさせていただきます。
まとめ:中古医療機器は法律やメーカー規制で買取できないケースもあります
本稿では、医療機器の売却において「買取できない」とされる具体的なケースとその背景にある法的・専門的な理由について、多角的に解説しました。
医療機器の売却が困難となる主な理由は、①買取業者が適切な販売許可を持っていない、②メーカーがリコール対象としている、または部品供給を終了している、③機器が著しく故障している、といった点に集約されます。これらの背景には、患者様の安全を守るための薬機法、適正な処分を義務付ける廃棄物処理法、そして公正な中古品取引を定める古物営業法という、厳格な法的枠組みが存在します。
特に、感染性廃棄物の不適切な処理が招く数億円規模の罰則リスクや、法律で定められたメーカーへの通知義務など、専門家でなければ見過ごしがちな重要ポイントが数多くあります。
したがって、医療機器を売却する際の最も重要な成功要因は、これらの法規制を熟知し、必要な許認可をすべて取得している、信頼できる専門の買取業者をパートナーとして選ぶことに尽きます。安易な価格比較だけでなく、業者のコンプライアンス体制や専門知識を見極めることが、法的なリスクを回避し、最終的に資産価値を最大化する唯一の道です。
閉院や設備の更新を検討されている医療機関の皆様が、本稿の情報を活用し、安全で満足のいく機器売却を実現されることを願っています。
許認可名 | 目的・内容 | 根拠法 | 許認可機関 |
---|---|---|---|
高度管理医療機器等販売業・貸与業許可 | クラスIII・IVおよび特定保守管理医療機器(CT, MRI等)の売買・貸与に必須。 | 薬機法 | 都道府県知事など |
管理医療機器販売業・貸与業届出 | クラスIIの医療機器(特定保守管理医療機器を除く)の売買・貸与に必要。 | 薬機法 | 営業所所在地の保健所 |
医療機器修理業許可 | 中古医療機器を自社で修理して販売する場合に必要。 | 薬機法 | 都道府県庁 |
古物商許可 | 中古品を業として売買するために必須。 | 古物営業法 | 管轄の警察署 |
動物用管理医療機器販売・貸与業届出 | 動物用医療機器を取り扱う場合に必要。 | 薬機法 | 家畜保健衛生所 |