国内医療機器業界で今注目の新興勢力と最新テクノロジーによる変革予想図

更新日:2025年05月27日

医療技術の進歩と高齢化社会の進展を背景に、国内の医療機器業界が大きな転換点を迎えています。既存の医療機器メーカーに加え、新たなプレーヤーが次々と登場し、国内市場の勢力図は複雑さを増しています。この記事では、業界再編の動きや最新テクノロジーの影響を読み解きながら、これからの医療機器業界の展望と飛躍が期待される企業の条件について探っていきます。

現在の国内医療機器メーカーランキングは?

経済産業省(経産省)が示すように、日本の医療機器メーカーにとって国内市場だけでは持続的な成長が難しくなってきています。少子高齢化が進む中、多くの企業がグローバル市場へと活路を見いだそうとしており、その戦略が今後の成長を左右すると言えるでしょう。

※出典:経済産業省「医療機器産業を取り巻く課題について

グローバル化が進む中、国内の医療機器市場、特に医療機器メーカーランキングの現状はどうなっているのでしょうか。日立、東芝、パナソニックといったかつて名を連ねた大手電機メーカーが戦略を見直す一方で、新たな企業が台頭するなどその勢力図は日々変化しています。ここからは、その最新動向について解説します。

売上ランキングでは光学系・映像関連メーカーが上位に

国内の医療機器メーカー大手のランキングに目を向けると、ソニーグループがその多角的な事業基盤と先進技術を背景に時価総額や売上高で際立った存在感を示し、多くの場合で上位を占めています。これに続き、独自の高度な光学技術や映像関連技術を活かし、高精細な診断機器などを開発・提供するキヤノンや富士フイルムといった医療機器メーカーも、市場で確固たる地位を築き、高い評価を得ていることが見て取れます。

なお、これらのランキングは経産省や厚生労働省(厚労省)による公式発表ではなく、あくまで民間企業の調査に基づく参考情報である点にはご留意ください。具体的なランキングデータは次の通りです。

▼経済誌による医療機器・医療IT関連の時価総額トップ10

順位 企業名 業態 時価総額
1 ソニーグループ 電気機器 194,027億円
2 HOYA 精密機器 70,571億円
3 キヤノン 電気機器 65,955億円
4 テルモ 医療機器 44,587億円
5 富士フイルムホールディングス 化学 40,700億円
6 オリンパス 医療機器 27,605億円
7 シスメックス 医療機器 18,528億円
8 旭化成 化学 14.831億円
9 島津製作所 医療機器 12,687億円
10 エムスリー 医療関連サービス 9,881億円

※参考:ダイヤモンド社「週刊ダイヤモンド」2025年2月1日号

▼転職サイトによる国内医療機器メーカーの売上高トップ10(2024年)

順位 企業名 業種・業界 売上高
1 ソニーグループ 総合電機 11兆5398億3700万円
2 日立製作所 総合電機 10兆2646億200万円
3 キヤノン 情報機器・通信機器 4兆314万1400万円
4 富士フイルム 情報機器・通信機器 2兆5257億7300万円
5 旭化成 化学・化成品 2兆4613億1700万円
6 ニデック 半導体・電子部品 2兆2428億2400万円
7 スズケン 医薬品・医療品卸 2兆2327億7400万円
8 東レ 紡績・繊維 2兆2285億2300万円
9 大塚ホールディングス バイオ・医薬品関連 1兆7379億9800万円
10 川崎重工業 産業用装置・重電設備 1兆5008億7900万円

※参考:キャリハイ転職「医療機器メーカーランキング!大手企業の一覧や年収・売上高【医療機器業界】

▼個人投資家向け企業分析ツールの開発・提供企業による医療機器業界の売上高ランキング

順位 企業名 売上高 時価総額
1 ソニーグループ 11,260,037百万円 20,883,289百万円
2 日立製作所 9,728,716百万円 15,631,157百万円
3 キヤノン 4,509,821百万円 4,040,285百万円
4 富士フイルムホールディングス 2,960,916百万円 3,271,048百万円
5 旭化成 2,784,878百万円 1,313,116百万円
6 東レ 2,464,596百万円 1,467,187百万円
7 川崎重工業 1,849,287百万円 1,337,974百万円
8 コニカミノルタ 1,159,999百万円 205,151百万円
9 住友重機械工業 1,071,126百万円 348,281百万円
10 帝人 1,032,773百万円 224,385百万円

※参考:バフェット・コード株式会社「医療機器業界 売上高ランキング(企業一覧)

相次ぐ関連業界企業や異業種からの参入

医療業界では、既存の医療機器メーカーだけでなく、異業種や健康産業関連のヘルスケア企業による新規参入が活発化しています。これらの企業は、独自の技術やノウハウを医療分野に応用し、新たな価値創造を目指しているのが特徴です。

例えば、化学大手の旭化成は、高度な化学技術を基盤とした血液浄化事業などをグローバルに展開。2025年4月には医療機器事業を専門とする新会社「旭化成メディカル株式会社」を始動させ、多角的なヘルスケアビジネスを加速させています。分析・計測機器大手の島津製作所は、X線診断装置などで長年の実績があり、その高い技術力で医療分野に貢献してきました。一時の不祥事を乗り越え、近年は好調な業績を維持しています。

また、素材大手の東レは、グループの繊維技術や高分子技術を活かし、東レ・メディカル株式会社を通じて血液透析分野などで高い技術力を発揮。少数精鋭で医療現場のニーズに応えています。重工業界からは川崎重工業が、産業用ロボット開発で培った技術を応用し、シスメックスと共同で手術支援ロボットなどを手掛けるメディカロイドを設立、医療用ロボット分野での展開を進めています。

こうした大手異業種による新規参入の動きは、先進技術を駆使するヘルステック企業の台頭とも相まって、医療業界に新たな多様性をもたらし、競争を通じた市場全体の活性化に大きく貢献しています。

注目すべきベンチャー企業の台頭

医療ベンチャーの分野でも、革新的な技術やサービスで医療機器業界に新たな動きを生み出す企業が登場しています。その代表的な企業と取り組みをご紹介します。

アイリス株式会社は2017年に設立された医療ベンチャーで、AI技術を活用した医療機器の開発・販売を行っています 。元救命救急医である社長の発案で、AIの力を借りて医師の負担を軽減し、医療の質を向上させることを目指しています 。中でも、2022年12月に市場に登場したAI搭載のインフルエンザ検査機器「nodoca」は、ひときわ関心を集めています 。

エムスリー株式会社は2000年に設立され、医師向けの医療情報サイト「m3.com」の運営から事業を開始しました 。現在では人材紹介や医療機器の販売など、幅広い事業を展開しています 。2017年には医療機器商社を吸収合併し、2016年からは医療ベンチャーへの投資も積極的に行うなど、医療機器メーカーとしての側面も強化しているのが特徴です。

株式会社ニューロシューティカル(NCI)は、ICT(情報通信技術)を医療ソリューションに活用し、新規医療機器の開発や、医療機器メーカーとの連携を進める医療ベンチャーです 。医療現場のニーズから生まれる製品開発における、高い技術力と品質管理能力、薬事承認取得支援などが強みです 。独自の集光技術を用いた「タムガイド」シリーズや、ディスポーザブル医療機器の開発も手掛けています 。

テクノロジーの進化による業界勢力図の大転換シナリオ

日進月歩で進化するテクノロジーは、医療機器メーカー各社の事業や、国内医療機器業界の勢力図に、どのような変革をもたらすのでしょうか。デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速は、医療・健康分野を目覚ましい成長市場へと押し上げると言われ、その影響力は計り知れません。ここからは、変革の最前線で注目されるヘルステックの具体的な可能性と、その将来性について見ていきましょう。

AIやロボティクスの応用

厚労省は、医療AI開発を推進する重点6領域として①ゲノム医療 ②画像診断支援 ③診断・治療支援 ④医薬品開発 ⑤介護・認知症 ⑥手術支援を定めています。こうした国の後押しもあり、医療現場では医療AIと先進的なロボティクスが医療現場での存在感を急速に高めてきています。

例えばAI診断技術は、画像診断の精度向上や早期発見という形で活用が進んでいるところです。さらにテレビドラマ等でも話題の手術支援ロボット「ダヴィンチ」によるダヴィンチ手術は多くの診療科で採用され、放射線治療や診断支援、リハビリテーション分野でもロボット技術の応用が広がっています。これは医療機器メーカーにとっても大きな開発テーマにもなりつつあると言えるでしょう。

遠隔医療とバーチャルケアの行方

遠隔医療には、患者が自宅等から医師の診察を受けるオンライン診療(バーチャルケア)や、より気軽に相談できる遠隔健康医療相談など、多様な形態があります。特にオンライン診療は、通院負担や感染症リスクの軽減、時間と費用の節約、プライバシー保護といった具体的なメリットが着目されているのです。さらに医師をはじめとする医療人材の偏りの緩和、医療資源が少ない地域へのサポートの役割を担うものとして期待されています。

一方で、高速通信網、データ標準化、法整備といった課題も浮かんでおり、これらを解決する医療オンラインシステムの開発など、医療機器メーカーのより一層の貢献が求められる分野でもあります。

在宅医療の推進と在宅治療機器へのニーズ

「2025年問題」や「2040年問題」という言葉が示すように、我が国は深刻な超高齢化と医療人材不足に直面しているのが現状です。こういった背景から、国は在宅医療の推進に力を注いでいます。このような自宅での治療を支える在宅治療機器のニーズは大きく、その開発も急務となっているのが現状です。特に、欧米では早くから用いられ、近年日本でも普及が進むPCAポンプ(自己調節鎮痛ポンプ)、鼻からの酸素吸入を助けるオキシマイザー、また多様な処置に使われるカニューレといった機器は、在宅療養の質を高めるために不可欠です。

このようなニーズの高まりを受け、今紹介した各種在宅治療機器を供給する医療機器メーカーの存在感はますます高まることが予想されています

医療IoTとウェアラブルデバイスの革新

インターネットで医療情報をつなぐ「IoT医療」(IoMTとも呼ばれます)で大切な役割を担うのが、体に身に着け日々の健康状態(生体情報)を記録するウェアラブルデバイスです 。集められたデータはネットワークを通じて医療関係者と共有され、遠隔での健康状態の把握や診療のサポートなどに生かされます。具体的には、慢性疾患の管理、高齢者の見守り、災害時の状況把握、臨床試験でのデータ収集などでの活用が挙げられます。

しかし、こうしたIoMTが社会で広く使われるようになるためには、まず情報の安全をしっかり守るセキュリティシステムや集まるデータの形式の標準化、そして個人の大切な情報を扱う上での倫理的な問題をクリアする必要があります。

医療DXが中古医療機器市場に与える影響

医療分野におけるデジタルトランスフォーメーション、いわゆる「医療DX」の推進は、中古医療機器市場にも影響を与え始めています。新しいデジタル技術に対応した医療機器への更新が進むことで、これまで使用されていた機器が中古市場へ流通し、リユースの需要が高まる可能性があります 。特に、高性能な画像診断装置やIT関連機器などは、導入コストを抑えたい医療機関にとって魅力的な選択肢となるでしょう。

しかし、医療DXによる需要増は、人気機種を中心に品薄状態を引き起こし、希望する中古医療機器の入手が困難になるリスクも指摘されています 。今後も需要の高まりが予測される中古医療機器市場の動向については、「世界規模で拡大する中古医療機器の市場動向について解説」もご参照ください。

医療業界の働き方改革もデジタル化を促進

深刻な課題となっている医師の長時間労働を解消し、医療の質・安全確保と持続可能な体制維持のための「医師の働き方改革」新制度が2024年より始まりました。改革に大きく関わってくるのが、「医療DX」の推進です。AIによる診断支援や情報共有の円滑化など事務作業の効率化により、チーム医療の効率アップにもつながるからです。

こうした取り組みは、医師や看護師の負担を和らげ、働き方を含む環境改善にもつながります。結果として専門業務への集中を助け、医療の質のさらなる向上も見込まれます。デジタル化に際し、変革を支える技術やシステムを提供する医療機器メーカーの役割も重要になってくるでしょう。

デバイスラグという日本の問題と課題

国内の医療機器市場では、メドトロニックやジョンソン・エンド・ジョンソンといった海外の医療機器メーカーが売上・シェア共に上位を占める状況にあります。一因として、日本の医療機器開発が抱える「デバイスラグ」と「デバイスギャップ」の問題が指摘されています。海外の製品が導入されるまで時間がかかる「ラグ」に加え、そもそも他国の製品が国内で導入されない「ギャップ」はより深刻です。

承認までに時間を要することや開発着手の遅れなど、日本固有の問題の影響が原因として挙げられます。承認遅れなどによる製品の世代差、それに伴うコスト増、内外価格差が要因となり、患者が最新技術の恩恵を受けにくくなる可能性も。審査迅速化の動きはあるものの、根本的な課題解決が待たれます。

中古市場での取引活性化が予想される医療機器

医療DXの推進により医療機器の高度化と更新サイクル短縮が実現し、結果として高性能な中古医療機器が市場に出回る機会が増えています 。また、データ連携や遠隔診療の普及は画像診断装置やバイタルデータ機器へのニーズを高め、中古医療機器市場の活性化につながると期待されています

とりわけ次のような機器が、取引のメインとなると考えられます。

  • CT(コンピューター断層撮影装置)
  • 再生医療機器(リファービッシュ機器)
  • AED(自動体外式除細動器)
  • 内視鏡装置
  • 超音波診断装置(エコー)
  • 患者モニタリング機器

全国にネットワークのあるグリーンメディカルはスピーディな対応が可能

新たな医療機器の開発によって、高性能な機器への更新が進み、中古医療機器市場の活性化も促されます。市場で取引される中古医療機器とは、一度使用された後に再販される機器や包装が開封された医療機器を指し、適切な保守点検・修理により品質・安全性・有効性が保たれるのが大前提です。

医療法で保守点検が義務付けられているだけでなく、中古販売時には製造販売業者(メーカー)への通知と承諾も法律で求められており 、メーカーによる正規の点検整備は安全な利用に欠かせません。

グリーンメディカルは、法規を遵守し、納入前に医療機器メーカーによる点検整備を実施。その費用も販売価格に含まれます。全国ネットワークによる迅速な対応と合わせ、安心してご導入いただけます。

詳細・ご相談は、お問い合わせフォームまで。

まとめ:技術革新の影響で変貌する医療機器業界の未来

今回は技術革新を軸に大きく変貌する日本の医療機器業界の現状と未来について解説しました。既存の医療機器メーカーに加え異業種やベンチャーも参入し、AIやIoT、ロボティクスが診断・治療を根本から変えつつあります。遠隔・在宅医療のニーズも新技術開発を後押ししています。

そして医療DXにより中古医療機器市場の活性化が進み、新たな選択肢をもたらす一方、機器の「デバイスラグ」などの課題が明確になりつつあります。今後は最新技術と市場ニーズを的確に捉え、さらに医療の質を高めていく姿勢が大きな変化を迎える業界を生き抜くキーポイントになってくるでしょう。

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